◼︎いよいよ3日目。
山頂でみたかった日の出はタイミングわるく見れなかったが
早朝からうれしい応援団が駆けつけてくれた。
しかも、山頂エイドからトレイルをくだって無量寿院の
裏手ののぼり口まで迎えにきてくれた。
100mile界のレジェンドであり、われらがトレラン協会の
会長・村松さん。そして筋肉兄貴こと田中のヨシさん&よしえさん夫妻、
村松さんに『ようやっとる!』とほめられ、ヨシさんの
よくわからない差し入れをもらい、また元気が出る。
こうやって振り返っても
この3日間、ほんとうにそうそうたるメンバーが
応援にきてくれたんだと思う。
バキバキ限界の体とは裏腹にうれしくて
ありがたくて友がきてくれるたびテンションあげさせてもらえた。
日曜の朝には15周=総距離120k に到達していた。
これまでの自分の最長距離は、2016年の信越五岳110k。
だったのですでに自己最高記録更新中となっていた。
でも不思議とその14,15周のあたりで自己最高をこえたとかの
意識はなく、頭の中はべつのところにあった。
今日も走れる限り、ただただ前に進むこと。
目の前のこの周回も
ケガをせずに無事に戻ってくること。
◼︎あこがれたレジェンドと走る
自己最長の120kをこえ、16周目が終わり、17周目に入った
山頂エイドで、なんと”世界の貝畑”、”ウルトラの女王”、
大好きな貝畑さんが来てくれていた。自家製のそうめんを
つくって差し入れと一緒に。
まさかのレジェンドの来訪にまたテンションがあがり、
火照った体内にキンと冷えたそうめんを流し込む。
うますぎて何杯おかわりさせてもらっただろう。。
そして、山ギア会メンバーのヨーヘイくん、みなこさん、
貝畑さんも合流して17周回へ。
*
貝畑さんと並んで芥子山を走る。夢のような楽しい時間だった。
いくつになっても走ることを心から楽しみ、
仲間のためにできることをやる。いつも貝畑さんのまわりには
その底抜けの明るさと優しさと強さにひかれた仲間がいて
同じ目線で楽しく走っている。
海外の想像できないような超長距離レースを
どれだけ走ってもそこには”走ること”がだれよりも好きな
気さくで楽しいおばちゃんがいる。
ここまでどうにか走ってきたおかげで
こんなご褒美がもらえたと
ケシゴの神様に感謝した。
◼︎感じたことない感情
17周目の半分をおわりがけのロード走ってるとき、
なんとまたまたレジェンドの来訪。
ミールこと倉田さんとバディの三村さんが市内中心部から
走って芥子山まで応援にきてくれた。しかも合流して
そのままトレイルの登りを一緒にのぼり、山頂まで。
日曜は土曜と同じくらい日差しが強く、昼すぎは相当暑かった。
そのなかを10数キロ走ってさらに山登り。すごすぎる。
そして走ってるときも山頂までいってもずっと笑顔のふたり。
このひとたちには
どうやっても叶わないなと確信。
さらに貝畑さんなんともう1周付き合ってくれた。
またまた内川さんと大笑いの道中。笑いすぎて
腹筋に負担がかかり、攣りそうになる。
終盤の終盤でレジェンドの応援で元気と力を充填。
先輩100miler・アベちゃんも差し入れ応援、
早朝の100mile師匠・村松さんにはじまり、
貝畑さんに、倉田さんに、アベちゃん、
自分が知る100milerたちがこのタイミングでつぎつぎと
背中をおしてくれた。なにを教えてくれるとか
じゃなく、ただ駆けつけて一緒に走ってくれる。
ただ応援するために時間をつかってくれたことが
ほんとうにうれしかった。
*
金曜からはじまったこの挑戦には
いつもだれかが一緒に走ってくれていた。
結局ただの1周もひとりで走ることがなかった。
このときの満ちた幸せな気持ちはいままで感じたことのない、
なにかあったかいものに包まれている..
ずっと見守られている…
そんな感覚。
余力なんてもう残ってないはずがどんどん中から
力が湧いてくる。足が前へ前へと出る。
もう完走への不安など微塵もなかった。
でも、逆に
ゴールが見えてきたと同時に
そう、この幸せな時間が
もうすぐ終わりを迎えてしまうことが
今度はさみしくなっていた。
ゴールするために完走するために走っているのに
“終わりたくない”という感情が大きくなっていた。
感じたことがない感情におそわれ、
内川さんと二人だけの19周目はそんな気持ちを
かみしめながら走った。
◼︎ラストサプライズ
残り2周となり完走はもう見えている。
が、体も限界をむかえていたようで
くだりを終えた中学校付近のロードで
右膝が『ビキッ』、、激痛が走り、思わず止まる。
痛いんだが、感覚も薄れつつあり、すこし時間を
おいて走り出すとほどなくまた『ビキッ』
気持ちが前に前にいくのに、走れない。
やっぱりただでは終わらせてくれないのが100mile。
(知ったような)
でももう完走は目前。無理して走らず、
歩きでそのままセブンへとロードを進む。
そして最終、20周目へ。
セブンでいつものように携帯からナミさんにLINE報告。
『19周目終了です。ラストいきます!』
そして返ってきたナミさんのLINEを
みてサプライズ!
これは、やばかった。
すぐに内川さんに画面をみせて
『これアカンでしょ』
『うん、これはアカンな』
100mileに一番思い入れのある友人、
トレランをはじめた当初、約9年前から
どこかであこがれだった存在、
100milerアボくんが最後の最後に応援にきてくれた。
そこからはアボくんとナミさんが待つ山頂エイドへ
言葉すくなく、でも確かな足取りで向かう。
そして、山頂エイドで対面!と思ったらすでに
感極まって涙ためながら、すげえっす、しか言えないアボくん。
その顔をみて、ゴールまだだというのに
こっちもこみ上げてきてほんとにあぶなかった。
内川さんもあの瞬間一番やばかったと振り返った。
◼︎I became a 100miler.
山頂テントでしばしアボくんと話したのち、
さあ、行こうかと
ほんとのほんと最後の半周へと進めた。
ずっと見守り、見送ってくれたナミさんの
最後の見送り、おそらくナミさんも
極まってきてると思ってあえて
さらっとエイドをあとにした。
まだ終わってない。油断するなと言い聞かせた。
最後のくだりでも、ロードでも
思っていたことといえば本当に
終わってしまうという寂寥感。
『ほんとに終わってしまうんすね』
『うん、終わるね』
『終わりたくないすね』
『うん』
そんな二三言のやりとりを繰り返しただけ。
セブンまでのロードの最後の直線、すべてを噛み締めながら
でも走ってゴールを迎えたかったから
無言で走りながら向かった。
そして、ずっとサポートしてくれたナミさん、
千田さん、黒明さん、アボくんに迎えられ
手をつないでゴール。
静かな温かい拍手。
たえてきたものが一気にこみあげてくる。
ゴールテープは応援にきてくれたみんなが一言ずつ
そのときのためにメッセージを書きいれてくれた
もの。それを見るとさらにこみあげる。
アボくん来たし泣いてしまうことはわかってたので
ふたりともサングラスは絶対外さない(笑)
43時間26分15秒、
総走行距離162k。
ケシゴ100、
完走。
I became a 100miler.
あこがれた100milerになれた瞬間だった。
◼︎バトンをつなぐこと
無事、制限の46時間以内に完走することができた。
ここまで振り返ってきて
やっぱりみんなの力で走らせてもらってたんだと
つくづく思い知る。
ふと思いついて半分衝動的にインスタで宣言した、
スタートはただただ衝動。
そこから内川さん、ナミさんの協力をあおぎ、
ひとりのチャレンジが3人のチャレンジになり、
インスタで練習の投稿なんかをあげていくと、
知るひとが増え、他にも応援してくれるひとが
増えてきた。近づいてくるうちにその応援の声を
かけてくれた友人の気持ちも背負ってチャレンジしている
かのような気持ちになった。
そして当日応援にきて一緒に走ったり、顔を見て
激励してくれた仲間や家族の想いもすべて積み重なり、
走ってるのは自分だけだけど、
自分のために走ってる感覚はとうに消えて
その関わってくれたみんなの想いに
こたえたいためだけにただ走っていた。
自分のために、自分の力を試してみたい、
そんな気持ちよりも、時間内に完走して
青木を応援してよかった
行って一緒に走ってよかったと思ってもらう
ことが自分にできる最大の恩返しだと。
そう思えたから気持ちが折れることはなかった。
このチャレンジでわかったことは、
“ひとりで走ってるんじゃない”
“ひとりで出来ることなんてない”
ってことだった。
もうひとつ、
わかったことがある。
それは、
100mileを走ることは、
“バトンをつなぐ”
行為だということ。村松さんや貝畑さん、そしてアボくん
大先輩たちが見せてくれた100mile、ウルトラランニング
の世界、そしてそれに挑戦する気持ち。
それに触れて自分のなかに火種が生まれ、
“バトン”が渡されていたのだと思う。
それは自分のなかの『未体験の世界に挑戦する』
という”バトン”だ。その”バトン”を自分の番として
自分に課した挑戦がこのKSG100だった。
そしてこのKSG100という”バトン”に触れた仲間や
自分にとっても
また”つぎのバトン”になるんだなって感覚があった。
*
ナミさんが、ゴールした瞬間に感じたという
『スタートになる』感覚
このチャレンジの終わりがまたつぎのチャレンジ、
自分のチャレンジ、
他のだれかのチャレンジにつながる。
“バトンをつなぐ”
という意味と同じ感覚だったんだと思う。
この”つぎのバトン”を自分のなかにも確かに植えつけて
そろそろ終わりにしたいと思う。
“つぎのバトン”
“これからする挑戦”は
この最高の体験をえることができた仲間、家族、
応援してくれたすべてのひとと
大好きな芥子山、そしてトレイルランニングに
自分にできる恩返しを一生かけてしていくこと。
そう心から思えた、
そう決めた。
*
最後に、
このチャレンジの途中で出会った
このメッセージをいつも胸に刻んで
これからもがんばります。
本当にありがとうございました!
コメント
また文章読みながら、思い出して泣いてしまいました。
バトンを渡された時って、自覚は無いけど渡されてて、そのバトンに気づいている人って少ないかもって思いました。
バトンを渡せた時に、初めて気づく。
この挑戦を立ち上げて、
完走して人に感動を与えた
青ちゃん
すごく頑張った!
よく頑張って完走しましたね。
自分を褒めてあげて下さいね。
心からのハグを送ります。